経理の目的は、「お金の管理」であることはもちろんですが、
それ以上に大切なのが、「経営状況を把握する」ための経理です。
決算期だけじゃなく、リアルタイムに把握する
正しく現在の状況を把握していない限り、正しい経営判断はできません。
そのために、経理はできるだけリアルタイムで把握しておく必要があります。任せっきりにするんじゃなくて、社長自信が首をつっこむようにしましょう。
損益分岐点売上高を把握する
起業してから当面の間は、損益分岐点売上高を毎月早い段階で越えられるかどうか、ということがミッションになります。
損益分岐点売上高の計算式は、「固定費÷(1-変動費率)」となります。
が、計算式で言われてもイメージしづらいですよね。
要は、「固定費と変動費を足した金額と等しくなる売上高」が損益分岐点売上高です。
自分で数式を考えれば納得しやすいですよ。
こんな感じになります。
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固定費をX、売上高をY、変動費率をaとすると、
X+aY=Y となる。【固定費+変動比率×売上高=売上高】ってことですね。
移項すると、X=(1-a)Y となるので、両辺を(1-a)で割ると、
Y=X÷(1-a) となる。
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変動費を「変動費率×売上高」で表現するのがポイントです。
この理屈をちゃんと理解していれば、いちいち計算式を覚える必要もありません。
中1レベルの数学なので、昔を懐かしみながら理解しておきましょう。
なお、変動費は売上に紐付いて上下する費用。つまり原価のこと。
固定費は、売上に関係なく毎月出ていく費用。家賃や給与などです。
気をつけておきたいのが、給与のうちいくらかを歩合制にしていたり、広告費なども売上と直接連動するようなものは変動費になりますね。変動費と固定費をしっかり分けること、これが第一歩ですね。
損益分岐点を越えるとボーナスステージが待っている
とにかく創業期は、「毎月、損益分岐点売上高をいつ越えられるか」を競うゲームだと思って頑張るのがおすすめです。
「今月は25日までかかった……、来月はなんとか20日までには損益分岐点を越えるぞ!」みたいな感じ。
念のためですが、損益分岐点を越えたからと言って、満足してはいけません。
損益分岐点売上高はいわばスタート地点。そこからどれだけ利益を伸ばせるかが勝負です。
損益分岐点を越えたら、このゲームはボーナスステージに突入します。
損益分岐点までは、固定費という重荷を背負っている状態ですが、いったん損益分岐点を越えてしまえば、あとは変動費がかかるだけで、いままでかかっていた固定費分がまるまる利益になるんです。
毎月20日までに損益分岐点を到達してしまえば、「残り10日はボーナスゲーム」みたいなもんです。
このボーナスゲームが本当にでかい。利益の倍率が変わります。
例えば、変動費率25%、固定費50万の会社があるとしましょう。
この時、損益分岐点売上高は約66万円になります。
もし仮に、2倍の133万円を売り上げたら、利益は約50万円。
3倍の199万円を売り上げたら、利益は100万円になりますね。
お気づきだろうか。
売上が133万円から199万円と「1.5倍」になるだけで、利益は50万円から100万円と「2倍」になっている。
これが固定費から解放されることのメリットです。
損益分岐点を越えるまでは、ただただ赤字を減らしていくだけの作業ゲーですが、損益分岐点を越えると、そこからビッグボーナスです。
利益の出方に敏感になる
創業期には、人を雇ったり、商品の内容が変わったり、それでなくてもちょっとしたことで利益の出方が大きく変わります。なので、その動きに敏感に気づくことが大切。そのための指標となるのが経理です。
なお、売上高ばかりを意識しすぎると足元をすくわれるので注意しましょう。
どれだけ売上があっても、入金されないと意味がありません。
「支払いは月初、入金は月末」というふうに固まっていると、月中で資金ショートしてしまいます。現金残高だけは、ちゃんと毎日どう動くのかを把握しておくようにしてください。